
建設業や建築業界における事業承継やM&A(企業の合併・買収)は、人材不足や後継者不在、地域密着型の経営スタイルの継続といった課題の解決手段として注目されています。
しかし、業種特有のリスクや引き継ぎの難しさも多く、慎重に進めないとM&A後のトラブルや業績悪化につながる恐れがあるので注意が必要だと理解しておくことが大切です。
この記事では、建設業や建築業でM&Aを成功させるための具体的な対策や注意点について説明しますので、気になっている人は参考にしてください。
建設業界の事業承継における背景と課題
建設業界は高齢化が進んでおり、特に中小企業では経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題です。また、国や自治体によるインフラ整備の需要や住宅市場の変動、地域密着型の工事業者としての役割など、事業継続の社会的ニーズも依然として高い状況です。そこでM&Aによる第三者承継は、経営を次世代につなぐ有効な選択肢となっています。
しかし、建設業のM&Aでは、許可・資格の承継、人材の維持、地域の取引先との関係性、現場対応力の引き継ぎなど、他業種と比べて注意すべき点が多いのが特徴です。
建設業や建築業のM&Aで失敗しないためのポイントと対策
建設業許可の引き継ぎに注意
建設業を営むには、都道府県または国の発行する「建設業許可」が必要です。これは法人ではなく営業所単位で付与される許可であるため、M&A後に会社形態が変わると「新たに許可の再取得」が必要になるケースがあります。特に「一般建設業」と「特定建設業」の区分や、許可業種(建築工事・電気工事など)ごとの対応に注意が必要です。
建設業許可の引き継ぎ対策
買収前に、現在の建設業許可内容と必要な継続要件を詳細に調査し、許可の「維持」か「新規取得」かを明確にしておく。
技術者・職人の引き継ぎがM&A成功のカギ
建設・建築業では「人」が最大の資産です。施工管理技士や一級建築士などの有資格者が退職・離脱すると事業運営に支障が出るため、M&Aにあたっては従業員の雇用継続や待遇維持が重要な要素となります。
技術者・職人の引き継ぎ対策
早期に社員との信頼関係を築く施策(面談・説明会)を実施し、既存の人材が安心して働き続けられるような継続的な雇用契約や待遇の明文化を行う。
地域の取引先や元請け業者との関係維持
建設業の取引先は、地域に根差した顔なじみの企業や自治体、元請け業者が多く、経営者の人脈や信頼関係によって継続しているケースが大半です。そのため、経営者が交代することで仕事が減る、契約が打ち切られるといった事態も起こり得ます。
地域の取引先や元請け業者との関係維持への対策
M&A前後での取引先への丁寧な説明、旧経営者による「一定期間の残留」や「共同名義の営業活動」を行い、信頼関係を継続させる。
案件管理・原価管理の仕組みを可視化する
中小の建設業者では、案件ごとの収支や進捗が属人的に管理されていることが多く、「引き継ぎ後に実態が把握できない」ことが失敗の大きな原因になります。
案件管理・原価管理の仕組みを可視化するための対策
M&A前に、見積もり・原価・発注・請求・支払いなどのフローを一覧化し、可能であれば建設業専用の業務管理システム(例:ANDPAD、建設BALENAなど)を導入して情報共有を強化する。
引継ぎ期間をしっかり確保する
M&A契約締結後すぐに経営交代するのではなく、引継ぎ期間(3ヶ月〜1年程度)を設定して、旧経営者がサポートできる体制を取ることが理想です。従業員・顧客・協力会社との関係も徐々に再構築することができ、軟着陸が可能になります。
引継ぎ期間をしっかり確保するための対策
譲渡契約に「一定期間のアドバイザー就任」「相談役としての残留」「営業支援」などの条項を含める。
建設業や建築業のM&A成功のためのパートナー選びは?
建設業のM&Aは業界特有の制約が多いため、業界知見のあるM&Aアドバイザーや仲介会社を選ぶことが成功のカギです。建設業専門の事業承継支援サービス(例:BATONZ、TRANBI、建設M&A支援センターなど)を活用すれば、許認可や財務の確認、スムーズなクロージングまでをサポートしてくれます。
建設業・建築業の事業継承(M&A)時に失敗しないための対策に関する記事まとめ
建設業・建築業における事業承継やM&Aでは、許認可・人材・信頼関係といった業界特有の要素を正しく引き継ぐことが最も重要です。
失敗を防ぐためには、「十分な調査」「引き継ぎ期間の確保」「関係者との綿密なコミュニケーション」が必要不可欠だとりかいしておいてください。
専門的なサポートを受けながら、双方にとって納得のいくM&Aを目指しましょう。